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【博多川12橋物語】第5回:水車橋(みずぐるまはし)

― 忘れられた水の旋律、時を回す「みずぐるま」の記憶 ―
中洲の迷宮を抜け、ビル群の圧迫感がふっと和らぐと、どこか優雅な響きを持つ名の橋に差し掛かります。
第5の橋、**『水車橋(みずぐるまはし)』**です。
ここは「20分コース」の折り返し地点。
現代の煌めきから遡ってきた旅が、いよいよ本格的に「古き良き博多」の記憶へと触れる、
大切な節目となる場所です。
■ 耳を澄ませば聞こえる、博多の鼓動
「みずぐるまはし」――。
その名の通り、かつてこの付近には、川の流れを利用して回るいくつもの巨大な水車が存在していました。
博多は古くからお香や薬、そして粉物の文化が栄えた街。
それらの原料を細かく挽くために、博多川の穏やかな水流が「動力」として使われていたのです。
船が橋の下に滑り込む瞬間、一度目を閉じてみてください。
今聞こえるのは、船頭の竿が水をかく「ピチャリ」という小さな音だけ。
しかし、かつてはそこに、水飛沫を上げる重厚な水車の回転音と、香木を挽く規則正しい音が重なり合い、
博多の街の活気あるリズムを作っていました。
この橋をくぐることは、いわば博多の「音の歴史」を辿る旅なのです。
■ 柳の影と、過ぎ去りし日の風景
この付近は川幅も安定し、両岸に垂れる柳が最も美しく見えるポイントの一つです。
かつての博多の人々も、水車が回る景色を眺めながら、柳越しにこの川面を見ていたことでしょう。
現代の橋はコンクリート造りですが、
その名前に「水車(みずぐるま)」という大和言葉を残した先人たちの粋を感じずにはいられません。
水面から見上げる橋の裏側には、都会の喧騒ではなく、
かつての水郷・博多の穏やかな時間が、今もひっそりと澱(よど)みのように留まっている気がしてなりません。
■ 船頭の視点から
「20分コースのお客様は、ここでゆっくりと船の向きを変えます。
その旋回のひととき、柳の葉が船にかかりそうになる距離で、かつての水車のオブジェを眺める。
ここからリバレインへ戻る道筋は、行きとはまた違った、穏やかな景色に見えるはずですよ」


